日暮れて途遠し、それでも㋧どこまでも、いつまでも、山谷越え・・・

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「晏子春秋」 問上第三 凡そ三十章 第五

「景公問ふ、聖王はその行若何と、晏子対ふるに衰世を以て諷楚す」



【聖王の政治と当今衰世の政治とを対照して、景公を戒む】


 景公は、諸外国を侮り、内政では国民を軽んじ、勇ましさを好んで、自分の楽しい事だけを求める。したがって我欲のままに物事を行っている。諸侯は斉国を嫌い、国民は景公を支持しない。景公はこうした現状を憂いて、晏子に問う、
「古の聖王は、こうした現状をどうしたのか?」


晏子、答えて曰く、
「聖王の行いは、公正にして邪心がありませんでした。ゆえに、悪口を言う人はいませんでした。仲間を組んでおもねることをしない、側近の臣のみを贔屓にしない、だから悪口ばかりで役にたたない側近はいませんでした。
 自分の身より国民の身を想い、税の取り立てにも横暴な行いはさせませんでした。他国に侵略せず、小国を凌いでその国民を苦しめる事をせず、諸国はその行いの尊さに尊敬の意を表しました。
 人を脅かすような鎧兜を用いて事に当たらず、人に多人数の暴力をもって命令せず、天下の人々はその威厳に従おうとしました。
 徳を行い、教え導いて諸国はこれに従い、慈愛をもって国民に接すれば、皆その恩恵を受けることになります。海内(中原)の人が聖王に帰するのは自然の成り行きです。


 今、衰世のこの時代に君主の地位にあるものは、人の悪口をいいふらすような者たちが徒党を組んで君におもねり、へつらうばかり。自分の財産を蓄える事ばかりを考え、国民を軽視している有様。隙あらば他国を侵略し、小国の民を奪う。これでは諸侯は認めてくれません。鎧兜で人を驚かして去らせ、人を従わせるには多人数の暴力を頼み、これでは天下に対して信用などあろうはずが有りません。
 災害は諸国に満ち、国民には労苦を与えるばかりで、夷敵は排除出来ないので、天下を救う事などできません。皇族,貴族が離散しても、国民はそしらぬ顔で助けてくれる事はないでしょう。」


景公、曰く、
「ならば、どうしたらいいのかな?」
晏子、答えて曰く、
「私が景公に願うことは、言葉を丁寧にし、進物を多くし、諸侯に遊説してください。
国民には法を易しくして罪科を減らし、夫役も軽くして労いの言葉をかけてください。
これは出来ますか?」


景公、曰く
「解った。これからは他国に対しては言葉を丁寧にし、進物を多くし、諸侯に遊説する事にする。国民が罪にならないような政治をおこない、もっと、国民と親しもうとしよう。これで小国が参内し、燕国、魯国がともに貢物をしてくれるだろう。」


墨子、これを聞いて曰く、
「晏子は道理をしっている。道は人の為にすればかない、自分の為に利をはかれば道に背く。景公は自分の為に利をはかって国民に見捨てられ、外国諸侯が使役に服する事になる。
すなわち、道はひとの為にするものであって、自分の利欲をおさえることが、人の行いとして道にかなうことである。だから、晏子は道をよく、しっている。」


古今に通じる政治姿勢だよね、墨子の晏子への評価が高い。