日暮れて途遠し、それでも㋧どこまでも、いつまでも、山谷越え・・・

つぶやき、独り言❓【自分大好き人間】の好きな生き方、

「晏子春秋」 内編諌上第一 凡そ二十五章 第二

「景公 酒を飲むこと酣(たけなわ)にして、諸大夫の礼をなすことなからんことを願う、晏子諫む」


【景公を諫めて、国を治めには礼が第一であることを説く】
 
 景公(荘公の次の君主、荘公の弟)は、盛んに酒を飲んで言うことには、
「今日は、諸大夫の皆と、大いに酒を楽しみたいものだ。無礼講でいこう!」


 晏嬰、姿勢を正して、毅然とした態度でいうには、
「君といえども、無礼講とは行き過ぎですョ。もともと群臣には礼などとは欲しくないものなのです。礼を無視すれば、力のあるものがその長に勝ち、武力が多ければ、それを用いてその君を殺すに足ります。しかるに礼を守る立場から、そのような事があってはならないのです。
 禽獣は力をもって政を行い、強き者は弱き者を虐げ、それら利によって日々仕える主人を変えれば、私たちは何処にいればいいのでしょうか、滅びるしかありません。
 およそ人が禽獣より貴いとされるのは礼があるからです。ゆえに詩経(いにしえの詩集)にもありますよね、『人にして礼がなければ、何故にサッサと死なないのか』と。礼はとても大切です。」


 景公は晏嬰にぷいと背中を向けて話を聞かない。少したって景公が室外に出るとき、晏嬰は立ち上がって挨拶をせず、また景公が部屋に帰って来たときも、立って挨拶をしない。
 景公と晏嬰が互いに酒を酌み交わしても、晏嬰は勝手に先に飲んでしまう。景公は怒って顔色を変え、手をさすりながら睨んで言うには、
「晏嬰が私に日々うるさく教えてくれているのは、礼の大切さであり、無礼はいけないと言うことのはずだ! 私が部屋を出入りするにも立ち上がらず、互いに酒を注いでも先に飲んでしまう、これが礼かな!」


 晏嬰は自分の席の敷物を避け、丁寧に拝礼して地に頭を景公に告げる、
「私、嬰は君に言った事を忘れる事がありましょうか、臣はあえて無礼を行いました。君が礼などいらないとお望みなら、君が部屋に出入りすのに際して、嬰は立たず、互いに酒を酌み交わしても、嬰は先に飲んでしまいます。」


景公は言う、
「これは私が悪かった、私の罪だ。」
晏嬰に席を進め、今後も私のために居て欲しいと、景公は盃三杯にして酒を辞め蓋をした。


この後より、法を整え、礼を修め以て国政を治めて国民を慈しんだ。